B032.翼をください。(話し方教室)

2002年に大学を卒業して、今年が2020年なので18年。

営業の仕事に携わっています。

今でこそ、人前で話すことに対してはそこまで抵抗はありませんが新人の頃はとても苦手でした。

緊張するし、言いたいことを伝えられない。

回りくどいし、一方的な話し方をしてしまう。

ダメダメです。

その時の上司から

「今のままではダメだ。一回、自分で『話し方教室』行って勉強して来い!!」

と言われました。

大学を卒業して数年。

生活にそんなに余裕があるわけでもありません。

けれども、将来のことを考えていろいろ調べてみました。

何かの雑誌に

「第278回 話し方教室」の記事を見つけました。

場所もJR大阪駅から徒歩数分のビル。

一回の講習会参加費は16,000円

その当時、ニンテンドーDSが欲しかったんです。

価格も恐らく、それくらい。

悩みましたが、自分への投資だ!

(回数もこれだけあれば、実績ある教室だろう)

と、いうことで早速、電話で申込を行いました。

そして当日。

日曜日の9時すぎ、JR大阪駅に降り立ちました。

(話し方教室って、どんな感じなんだろう・・・)

期待と不安を抱えつつ。

話し方教室に通い、成長した自分を思い浮かべます。

何せ身銭を切っての話し方教室です。

駅から歩いて住所のビルに到着します。

なんということでしょう!

駅から徒歩数分の場所にあるとは思えないクオリティの雑居ビル。

なんとも言えないレトロな建物。

その、ザ・雑居ビルの3階の教室へ。

入口すぐに受付があり、本日の分の受講料を支払います。

アバヨ。

16,000円。

部屋の奥に進むとホワイトボードと長机、パイプイスが並んでいます。

全員で15~20人くらいが参加できるスペースです。

そして、ずーっとヒーリング系の音楽が流れています。

その独特な雰囲気に、得も言われぬ不安を感じました。

少し早く着いたので、席はホワイトボードの前。

しばらくして生徒の方が少しずつ教室に入ってきました。

私の隣に座ったのは、巨漢の40代くらいの男性。

ウガンダ・トラさんを10倍怪しくしたような方でした。

そのウガンダさんは席に着くや否や

「初めての方ですか?ここの先生は、とてもい~ですよ~!!」

と、目を見開いて話しかけてきました。

ここに信者らしき人を発見しました。

そして、先生到着。

これがまた・・・なんとも胡散くさい。

細身で白髪交じりの50代くらいのおじさんです。

入ってくると、いきなり

「じゃ~、発声練習から!」

と、ホワイトボードを反対に返して

「あ、え、い、う、え、お、あ、おっ!」

サンハイっ!

部屋の中は、合唱です。

私の心臓はバクバクです。

早くもついていけません。

隣りのウガンダさんは、やはり目を開いて大声で発声しています。

絶対、信者です。

発声練習が終わり、パートナーレッスンが始まりました。

初めての私にパートナーなどはおりません。

2人一組になってください・・・

「ハッ!!」

見ると、隣りの信者ウガンダがウェルカムの雰囲気を出して微笑んでいます。

目の前にはホワイトボード、左は壁。

後ろの人は既にペアが成立し、右に信者ウガンダ。

四面楚歌。

軍師・諸葛孔明でも、この危機を乗り越えることはできなかったハズです。

計られたように信者ウガンダとペアになった私。

様々な課題を二人でやっていきました。

それこそ、必死です。気を抜けばトラに食われるかもしれません。

もし、私に翼があったなら、〇〇できるだろう~!

先生:さぁ、この例題の〇〇を自分で考えて、気持ちを込めて交互に発表してみましょう!

サンハイっ!

(もし、私に翼があったなら、今すぐこの窓ガラスをぶち破り、ここから逃げ出すだろぅ~)

そんなことを思いながらも

口では

もし、私に翼があったなら、自由に大空を飛び回ることができるだろう~!

なんて、差し障りのない優等生の回答をする私。

そんな私に、翼をください。

昼の休憩時間。

ヒーリングの音楽がまた流れています。

人はアウェイでは、仲間を探そうと必死になります。

すると発見しました!私と同じ匂いのする人。

部屋の隅に明らかに場に馴染んでいない20代男性。

今回初めてですか?どちらからいらっしゃったんですか?と聞くと

今回が初めで参加で、今日は岡山県からやってきたといいます。

上には上がいます。

今回に限っては、下には下かもしれません。

私も小さい人間です。

当時、私は新大阪駅近くに住んでいたので家を出ても20分くらいのものです。

岡山県!

岡山県よりかはマシだと思って、自分を勇気づけました。

そして、夕方にやっとプログラムを終了しました。

早速、次の教室の強烈な勧誘が始まります。

ここは「絶対に回避しないといけない!」と朝の発声練習の時から心に決めていたので、逃げる様にその場を立ち去りました。

あの話し方教室以来、話が上手くなったかどうかは分かりません。

しかし、あれだけの異なる空間にいたことで多少の度胸はついたように思います。

16,000円分の経験。

もう二度とあの経験したくないけれど、経験は財産。

今となれば、16,000円の勉強代は それなりの効果はあったのかもしれません。

信者ウガンダは今日もどこかで発声練習をしているのかな・・・